SSブログ

【北朝鮮の「核・ミサイル問題」】

 北朝鮮が核兵器を廃棄するかも知れない、との期待が広がっている。
 しかし、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、「北朝鮮の核兵器を廃棄する」、とは一言も言っていない。
 北朝鮮の言う「朝鮮半島の非核化」とは、核兵器を廃棄すると見せ掛け、駐韓米軍の核の脅威を取り除き、米韓同盟の破棄を求めるための罠である。

狙いは、米韓同盟の破棄.
 北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」や「体制の保障」を持ち出してきたのは、何故か。
 北朝鮮は、米軍を韓国から撤退させ、米軍からの核ミサイル等の攻撃がない旨の確証を得て、更には、韓国を軍事的手段で占領するため、「米韓同盟の破棄」を望んでいる。
 そのためには、朝鮮戦争の「休戦協定」をやめ、「平和協定」を結ぶのが第一であろう。
 北朝鮮が言う「平和協定」とは、南北が共存する「平和」を意味するのではなく、北朝鮮に対する米軍の攻撃力を行使できなくするためだ。
 米軍が撤退し、韓国軍だけで防衛するとなった場合、北朝鮮は、諜報戦で韓国々内を混乱に陥れ、奇襲攻撃をかけ、あっという間に韓国を占領し、金一族による統一が完成してしまう可能性がある。

同盟破棄への戦略.
 北朝鮮はこれまで、核開発を巡って結んだ合意を2度も反故にしたため、「合意を守らない国」と見做されている。
 そこで北朝鮮は、今までにない新たな戦略を立ててきた。
 金委員長は、親北派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に狙いを定め、非核化ための南北首脳会談を呼び掛けたのだ。結果、文大統領は、「朝鮮半島・非核化への第一歩」、と舞い上がった。
 しかし北朝鮮の国営放送には、「非核化」なる文言は一切なかった。またしても、口先だけだったのか。
 北朝鮮が「非核化」のための首脳会談を言い出したのは、国連制裁や軍事的圧迫の効果が出てきたからだ。

在韓米軍の撤退.
 北朝鮮は、核兵器廃棄の約束の見返りに、脅威となっている米軍の核の排除を求めて来るだろう。
 そして、これら北朝鮮の要求を現実化するため、焦点となるのが「米韓軍事同盟」を破棄し、在韓米軍を撤退させることだ。
 しかしこれは、米軍にとって戦略の大転換となるため、現実的ではない。
 ところが、前のめりになっている文大統領は、これをを受け容れてしまうる可能性がある。

核廃棄の合意を守る保証はない.
 北朝鮮は従来から、「強力な軍事的抑止力を備えることのみが、戦争を防ぎ、国と民族の安全を守る」、と自衛的な核抑止力を持つ権利を主張している。
 核兵器を保有すること、核兵器大国であることが、金日成(キム・イルソン)氏から続く北朝鮮の大方針。金委員長がその大方針を転換できる訳がない。

「交渉」を時間稼ぎに利用.
 今まで、金王朝を潰せなかった主な原因は、1994年の「米朝合意」と、2007年の米韓中朝露日による「六者会合の合意」だ。
 また、金大中(キム・デジュン)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)の両大統領は、南北首脳会談を行うなど、何かと北朝鮮を支援した。
 あの時、北朝鮮の謀略を読み、口先だけの合意などせずに制裁を継続していれば、今頃、北朝鮮の核・ミサイルに振り回されることはなかった。
 北朝鮮では今後、核・ミサイルの高度化が進むと予測される。
 2020年前後には、確実に水爆実験を成功させ、小型化にも成功するだろう。
 しかも、ミサイル弾頭部の多段化にも成功すれば、現在ある米日韓ミサイル防衛による撃墜も、困難となってしまう。

おわりに.
 この度の米朝交渉は困難だと思われる。北朝鮮が核兵器やICBMをほぼ完成させているからだ。
 焦点は、①.北の核・ミサイルの廃棄、②米韓軍事同盟の破棄だが、「核は破棄はしない」という北の本音を米国が見透かしていれば、交渉が成立するとは思えない。
 しかし、北朝鮮が欺くと分かっていても、前のめりになっている韓国が呑んでしまえば、交渉成立の可能性はある。
 例え交渉が成立しても、北朝鮮が合意を履行する可能性は低かろう。厄介な事案だ。


★「正論」6月号、『「朝鮮半島の非核化」と書いて、「米韓同盟破棄」と読む』(軍事アナリスト・西村金一氏)、より.

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。