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【抑止力を整えよ】

二人のカール.
 米国に亡命した中国人科学者は、「中国は、二人のカールを愛する国だ」、と言う。
 『2人のカール』とは、『資本論』や『共産党宣言』で有名なカール・マルクスと、もう一人は、『戦争論』で有名なカール・フォン・クラウゼウィッツである。両者に共通するのは“力の信奉者”である事だ。
 「戦争が停止する時は、両者の武力が均衡した時だけである」・「流血を厭(いと)う者はこれを厭わない者によって必ず征服される」・「戦争は血を流す外交、外交は血を流さない戦争」など、“力の信奉者”は数々の箴言(しんげん=金言)を残す。

力の信奉者.
 習近平・国家主席、金正恩・総書記・プーチン大統領など、独裁者に共通しているのは“力の信奉者”である事だ。
 戦争は国益争奪の政治の延長に過ぎないのであって、結局は“力”が決める。“力”は経済・科学技術・外交・軍事など、諸力の結集であるが、やはり決定的な“力”は軍事力だ。

『力のない外交』は無力.
 ソ連崩壊後、米国・英国・ロシアは、「ウクライナの主権と領土の統一性を保障」する『ブダペスト覚書』を締結した。しかし、クリミア半島併合により、“覚書”は一夜にして反故にされた。
 中国の『人民日報』は、「西側世界は国際条約・人権・人道といった美しい言葉を口にしているが、ロシアとの戦争のリスクを冒すつもりはない。約束に意味はなく、クリミア半島とウクライナの運命を決めたのは、ロシアの軍艦・戦闘機・ミサイルだった。これが国際社会の冷厳な現実だ」、と述べている。
 “力の信奉者”と対峙するには“力”で圧倒されない事だ。
 中国は国防費を30年間で39倍、10年間で2・2倍に伸ばした。通常兵器のみならず,核兵器でも米国を凌駕しようとしている。
 オースティン米国防長官は、「中国は2030年までに核弾頭を約1,000発に増強し、核戦力の三本柱(地上・潜水艦・戦略爆撃機)の強化を目指している」、と述べた。
 米国は10月に公表した国家安全保障戦略で、中国を「国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競合国」、と位置づけた。
 また中国は、インド太平洋地域の米国の同盟関係を侵食しようとしており、日本を含む同盟国や友好国との連携強化を図るため、米国は同盟国に対して防衛力の強化を促した。

戦えねば抑止力たり得ぬ.
 中国は最早、米国一国でも手に余る存在である。
 「台湾有事は日本有事」である。日米同盟を基軸とし、価値観を同じくする友好国と共に、“力に裏付けられた外交力”で台湾有事を抑止しなければならない。
 戦争が起これば犠牲は計り知れない。ウクライナ戦争を見れば明らかだ。“抑止”のための投資は、いくら高価でも戦争より遥かに安価で安全である。
 種々雑多な予算をかき集めて「GDP2%達成」、に見せかけても決して“力”にはならない。
 今まで十分な予算がない中で身を削ってきた自衛隊は、気力だけで仁王立ちしている『弁慶』に過ぎない。戦えなければ抑止力たり得ない。
 今求められるのは、早急に“力”を回復させて抑止体制を構築し、平和を維持する事である。


★産経ニュース『【正論】「抑止」への投資を躊躇するな』(麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男氏)、(2022/12/6)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20221206-ANH45OBJLFIPLHJXPM6OMJNWG4/

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