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【「一つの中国」は、フィクション】

核戦争を懸念する米国.
 既に域内随一の巨軀(きょく)となった人民解放軍を、一撃で食い止める事は最早、現在の日米同盟にも台湾にも難しい。
 米国は全面核戦争を避けようと、核兵器保有国との戦争では非常に慎重になる。
 しかしそれは、前線にある日本と台湾に大きな負担を強いる事を意味する。
 米国は、戦略核兵器を用いてでも台湾を守る、という決意を示していない。
 米国の台湾防衛に関する立場は、今も曖昧なままだ。
米国の核の傘の下にある日本・韓国・NATO諸国と比べて、台湾防衛コミットメントは脆弱だ。
 仮に中台戦争が始まれば、米軍主力の空母機動部隊は中国のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略に押され、爆撃機や中距離・対艦ミサイルの射程外からの局地的な戦力投射に徹する事を意味する。
 前線にある台湾も日本も、中国が台湾征服を諦めるまで中国軍の猛攻に晒され、膨大な損害を被るだろう。
 だから中台戦争を始めさせてはならない。台湾海峡の平和と安定こそが、今世紀前半の日本外交の焦点である。

「一つの中国」は、正当性なし.
 「中国は一つである」という理屈は、中国の台湾侵略を正当化しない。
 東西対峙の下、南北朝鮮・南北ベトナム・東西ドイツが生まれた。中国も毛沢東の中華人民共和国と蔣介石の中華民国という分断国家となった。中国は二つなのだ。
 1969年、ダマンスキー島を攻撃してソ連軍から手痛い反撃を食らった毛沢東は、モンゴルに陣を敷いたソ連陸軍6個師団を前にして震え上がり、日中・米中の国交正常化を焦った。
 米国も日本も、中ソ対立の激化を戦略的好機と見て、中国の正統政府を台北政府から北京政府に切り替えた。
 その際中国は、「台湾は中国領土の一部である」と主張し続けたが、日本も米国もその主張を受け入れず、曖昧にした。.

台湾侵略を阻止.
 毛沢東も蔣介石も、「中国は一つで、我こそがその正統政府である」、との立場を譲らなかったので、「一つの中国」という虚構が成り立っているだけだ。中国は2つに分断されている、というのが事実なのだ。
 国連安保理議席が北京に変わった後、国連総会に台湾の議席を残そうとすればそれも可能だったろう。しかし誇り高き蔣介石は、国連から退場する道を選んだ。
  日本も米国も、台湾海峡の平和と安定が保たれている限り、「一つの中国」というフィクションを尊重する事を約束している。
 中国が台湾を侵略し、台湾人の謳歌する自由と民主主義を武力で踏みにじれば、「一つの中国」の前提は崩れ、「二つの中国」の正規軍同士がぶつかる事態となる。
 日米両国は、外交・経済・軍事・戦略コミュニケーションのあらゆる手段を動員し、中国の台湾侵略を止めねばならない。

★産経ニュース『【正論】「一つの中国」 の虚構と中台戦争』(元内閣官房副長官補、同志社大特別客員教授・兼原信克氏)、(2023/1/12)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20230112-AG4YRHW3JRO4DPUDRBFGI2TD4I/

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