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【空中空母】

 無人化が進む現代、戦闘空域に、より多くの無人機を如何に効率よく投入できるかが勝負の分かれ目となる。
 そこで各国は、無人機とその運用に関する技術開発を競っている。世界最強の米軍も例外ではなく、間もなく空飛ぶ空母=「空中空母」の実証試験を行う予定となっている。
 予定では来年、大型輸送機C-130から4機の無人機を発出して回収する、との試験飛行を実施する。既に行われたデモ機での試験は、成功している。

「空中空母」の概念.
 「空中空母」の構想は、アメリカ国防高等研究計画局が進めている「グレムリン計画」というもので、コンセプトは次のとおり。

①.母機となる戦闘機や輸送機の主翼下、爆撃機なら爆弾倉などから無人機を投下・発進させる。回収は、母機から伸ばしたアームで行う。
②.無人機は「グレムリン」(約50万ドル/機)と言い、最大300カイリ(約560㎞)進出した先で1時間ほど滞空し、搭載しているカメラやセンサーで、無人機同士および母機とリアルタイムでデータを共有できる。
③.電波受信や電波妨害も可能で、150ポンド(約68㎏)までなら武器も搭載可能。
④.回収して整備した後、24時間以内に再び投入できる。20回は反復使用可能。
⑤.将来的には、AI(人工知能)を利用し、1人の操縦者が複数の無人機をコントロールする。
⑥.その他、
 ●無人機のサイズは、全長約4m、全幅2m弱で、本格的な攻撃兵器は搭載できない。
 ●無人機なので人命損失の心配はなく、ハイリスクな敵の防空網に突入して広範囲に亘る偵察・索敵活動が可能。
 ●無人機にシンプルな対空レーダーを搭載し、有人戦闘機のレーダーとリンクすることで、レーダーのカバー領域を拡大する事もできる。

「空中空母」計画の長い歴史.
●最初の構想は米海軍によるもので、1933年、飛行船に護衛用の戦闘機5機を搭載する計画が立てられたが、中止された。
●1945年に日本軍が、「一式陸上攻撃機」に特攻用の有人小型ロケット機「桜花」を搭載して出撃したが、制空権がなかったため、多くが母機もろとも撃墜されてしまった。
●戦後に米空軍は、B-36戦略爆撃機に護衛用の戦闘機を吊して戦闘空域まで運ぶ計画を進めたが、これも実用化には至らなかった。

 その後、ミサイルや空中給油機といった新たな技術が発達し、有人機が有人機を運ぶメリットがなくなり、「空中空母」計画は長い冬の時代に入ってしまった。

計画の復活.
 ところが21世紀に入ると、味方に人的被害のない無人機の技術が発達したことで、再び「空中空母」が日の目を見るようになった。
 実は日本でも、防衛省が2009年から「無人機研究システム」というプロジェクトに着手している。F-15戦闘機などから小型の無人偵察機を発出するというものだ。
 将来的には、小型無人機を搭載し、遠方の敵をレーダーで探知する機能を持たせ、母機との間で情報を共有する計画もある。

問題点.
 現在の米軍の計画にしろ、日本の構想にしろ、最終的に問題となってくるのはコスト面だ。
 高性能・高機能を追求すれば、無人機といえども高価になる。
 また、敵の手に落ちてしまったら軍事技術や機密情報が漏れてしまうので、自爆装置も必要となろう。
 母機に回収するための技術開発コストも考慮すると、空母のように子機を回収するのではなく、低価格の汎用品を使った単機能の「使い捨て無人機」の方がリーズナブルだ。

 何れにしても、かつてないほど実現に近づいている新兵器「空中空母」。戦場に投入される日も近い?

★「プレイボーイ」6/11号、『米軍の最新兵器「空中空母」が間もなく実用化ってマジ!!?』、より.

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