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【「アルツハイマー」の根本治療法】

アルツハイマー型認知症.
 2025年になると、認知症の患者数が700万人になると言われている。
 認知症の8割を占めるのが、アルツハイマー型認知症。(残りは、脳血管性認知症と、レビー小体型認知症)
 アルツハイマー型認知症(以下「アルツハイマー」と略)とは、タンパク質の老廃物であるアミロイドβが、脳内に蓄積される事によって起こる認知症。

アルツハイマーと糖尿病.
 最近、糖尿病と深い関係にあるインスリンが、アルツハイマーの発症と密接に関わっている事が分かってきた。糖尿病患者がアルツハイマーを発症するリスクは、そうでない人の2倍以上。
 インスリンは、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれたり、エネルギーとして消費されたり、蓄えらりたりするのを促し、その結果、血糖値が下がる。そのインスリン分泌に障害が起きて血糖値が上がる、というのが糖尿病。
 インスリンは、記憶を司る脳の海馬にエネルギーとなるブドウ糖を送り込む働きがある。
 しかし、インスリン分泌に障害が起きると、ブドウ糖が海馬に届かなくなり、結果、記憶力が低下してしまう。

 糖尿病になると、インスリン分解酵素の活性が低下する。インスリン分解酵素は、アミロイドβ(アルツハイマーの原因物質)も分解する。
 つまり、糖尿病になると、アミロイドβの分解ができなくなり、アルツハイマーの発症に拍車がかかる、という訳だ。

アルツハイマーは脳の糖尿病.
 広島大学の鬼頭昭三・名誉教授は、『最善のアルツハイマー治療薬』として『経鼻インスリン治療薬』を挙げている。
 鬼頭教授によれば、経鼻インスリン治療薬を鼻から吸引すると、鼻静脈叢や嗅皮質を介し、脳内にインスリンが効率よく取り込まれる。アメリカでは、既にその薬は発売されているが、日本では、未だ認められていない。
 脳とインスリンを巡る研究は他にもあり、東北大学・脳科学研究センターの福永浩司・教授は、「2011年に認可されたアルツハイマー治療薬のメマンチンが、脳インスリン・シグナルを改善するのを発見した。メマンチンは、インスリンを増やす糖尿病治療薬と同じ作用があり、それが脳に働いてアルツハイマーを改善した。この研究により、アルツハイマーは脳の糖尿病である事が実証された」

アルツハイマー検診に、画期的な血液検査.
 現在の一般的な健康診断では、アルツハイマーの発症リスクは判断できない。
 先月8月7日、島津製作所が興味深い分析技術を発表した。
 島津製作所では、ノーベル賞受賞者の田中耕一さんらが開発した質量分析技術を使い、血中のアミロイドβ量を正確に測れる血液検査技術を完成させた。
 血中のアミロイドβ量から、アルツハイマーの発症リスクを正確に予測できるようになれば、アルツハイマーの予防も可能になるだろう。
 血液検査で早めにリスクを把握して発症を防ぐ、というのが今後の潮流となりそうだ。
 アミロイドβは、アルツハイマー発症の20年前から沈着が始まるので、仮に血液検査で陽性になったとしても、対策を立てる時間的余裕は十分にある。

「超音波」で、根治の可能性あり.
 アルツハイマーや軽度認知障害と診断されてからの治療法も、日々進歩している。
 中でも注目を集めているのが、東北大学の下川宏明・教授率いる研究チームが、今年7月から臨床試験を開始した「超音波治療法」である。
 下川教授によると、「マウスの脳に超音波を照射したところ、脳内の血流の改善と同時に、アミロイドβの蓄積の顕著な減少が確認できた。世界で初めて、アルツハイマーの根治治療法の可能性が見えてきた。安全性・有効性の最終確認ができたら、国に保険適用の申請を行う予定で、5年以内に実用化できれば、と考えている」、とのこと。
 そう言えば、腕時計の金属バンドや眼鏡の細かな部分の汚れを落とす、「超音波洗浄」っていうのがあったっけ。

脳を若く保つコツ.
 冒頭に触れた通り、糖尿病患者がアルツハイマーを発症するリスクは、そうでない人の2倍以上。
 これは、糖尿病の予防に励めば、アルツハイマーの予防にもなる事を示している。。
 「一日30分の有酸素運動を、二日に1回行うと、糖尿病とアルツハイマーの予防になる事が分かっている」、と東京医科歯科大学・認知症研究部門の朝田 隆・特任教授は語る。
 アルツハイマーの予防として「脳トレ」もあるが、朝田教授のお勧めは、アメリカのオンラインゲーム「ブレインHQ」。
 アメリカ国立衛生研究所が、65歳以上の約2,800人に行った調査によると、「ブレインHQ」をするグループは、何もしないグループに比べ、認知症を発症するリスクが48%も低下した。
 因みに日本では、コーヒーメーカー「ネスレ」のサイトで、ネスレ・ウェルネスクラブの会員登録を行うと、月額1,080円(税込み)で日本語版の「ブレインHQ」を利用できる。

 「麻雀などの頭脳ゲームにも、認知症予防効果がある」、と脳科学者である諏訪東京理科大学の篠原菊紀・教授は語る。
 麻雀などのギャンブルに興じるグループの方が、しないグループに比べて脳の働きが低下しない。“わくわく・どきどき”するとアドレナリンが分泌され、記憶障害を抑制する効果があるためだと考えられる。
 「“わくわく・どきどき”しながら日々を過ごすのは、脳を若く保つ重要なコツではないか」、と篠原教授は語る。

 年齢を経ても、心豊かに過ごすことができれば、有吉佐和子著『恍惚の人』で描かれているような絶望を、回避できるかも知れない。


★「週刊新潮」(9/27号)『根本治療が見えてきた「アルツハイマー」』、より.

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