SSブログ

【紛争仲裁事業、China】

 各地で頻発するデモや暴動。貧富の格差や役人の腐敗や汚職に国民の不満が高まっているChina。激動の中で模索が続けられる現状を紹介するドキュメント・NHKスペシャル「中国激動 怒れる民をどう収めるか ~密着 紛争仲裁請負人~」(6/16放送)に注目した。

 China各地で人民の怒りが爆発し、頻発するデモや暴動。その数、今や年間20万件。
 地方政府の役人は、「地方は土地開発でしか業績を上げられない。住民の言うことなど聞いていられない」、と語る。
 このままでは国の体制までもが揺らぎかねないと危惧する習近平・新国家主席は、「我々は民の声に耳を傾けなければならない」と公言し、この問題を最重要課題の一つと位置づけている。

 怒れる民をどう収めるか、新しい取り組みが今始まっている。地方政府と民衆の間に立ち、紛争を解決する民間の機関が誕生した。周 鴻陵(シュウ・コウリョウ)さんがその仲裁組織の代表を務める。
 周さんがこの事業を立ち上げたのには訳がある。それは1989年の天安門事件にあるという。周さんは当時27歳で、民主化運動に身を置いていた。政府は武力で民主化運動を鎮圧したが、多くの仲間が投獄され、中には行方不明になった若者もいる。
 天安門事件を目の当たりにした周さんは、暴力では問題は解決されないことを痛感した。各地で勃発するデモ・抗議活動を、暴力ではなく話し合いで解決しようとこの民間仲裁事業を立ち上げた。

 何としても土地の開発を進めたい地方政府の役人は、「(民衆を)殴っても脅してもだめだ。民衆は言うことを聞いてくれない」、と怒れる住民に手を焼き、紛争仲裁請負人に仲裁を依頼してきた。Chinaの政府機関が民間に仲裁を持ちかけるのは異例なことだという。
 ところで何故、地方政府は強硬に土地の開発を推し進めようとするのか。そこには、土地の開発が莫大な利益を生み出す仕組みがあるからだ。
 土地の私有制度がないChinaでは、土地の使用権のみが農家に認められている。土地を開発する場合、地方政府は土地の使用権を開発業者に売却して莫大な売却益を手にする。目立った産業を持たない地方政府にとって、土地開発が最大の収入源になっている。
 使用権を失った農家は、地方政府からの補償金と引き替えに土地(農地)を立ち退かねばならない。しかし、その補償金が十分でないと訴える場合が多く、争いが絶えない。

 地方政府vs住民達の争いは年々激しさを増している。13億の国民が、みな豊かさを求めて急速な経済成長を続けてきたChina。しかし成長に取り残された人々に不満が渦巻き、政府はこれを抑えきれなくなっている。
 中央政府は国民の怒りの矛先が自分達に向けられことを怖れ、3年前、国務院が地方政府に対し、「強制的な土地の収用や立ち退きを禁止し、国民の不満がこれ以上高まるのを抑えよう」、と緊急の通達を出した。
 新たに国家主席に就任した習近平氏もこの方針を引き継ぎ、「我々は常に国民の声に耳を傾けなければならない。経済発展を維持しながら、皆が豊かになる安定した社会を目指す」、と公言した訳だ。

 紛争仲裁請負人・周さんの活動は国からも注目されており、共産党幹部養成校「中共中央党校」(現国家主席の習近平氏がトップだったこともある)の教授から周さんに、幹部養成用に“住民の集団抗議行動への対処”なる教材の執筆依頼があった。「住民の不満とどう向き合えばいいのか、我々には経験が無く対話の糸口が掴めない。周さんの活動のような民間のやり方を、是非参考にしたい」、とのことであった。
 国の幹部を養成する中央党校から、民間人である周さんに対してこの様な依頼があったので、周さんは驚いたという。周さんはその草稿に、「官民双方が、それぞれ利益を得られることを理解すれば、話し合いで対立を乗り越えられる。この国の秩序は、住民との対話によってのみもたらされる」、と記している。
 紛争仲裁請負人である民間人、周 鴻陵(シュウ・コウリョウ)さんの活動は、徐々にではあるが効果を上げつつある。周さんのご健闘を祈念致したい。

 中央政府は、天安門事件で多大な恩があり・強大な武力を持ち・独自の企業も運営する利権組織、人民解放軍に頭が上がらず、また、怒れる人民対策にも苦慮している。
 人民解放軍をなだめ、怒れる人民のガス抜きを考慮し、東シナ海や南シナ海の紛争で外国との安直な妥協は許されまい。
 でも“なだめ・すかし”が過ぎれば、外国から叩かれる。"ラスト・エンペラー”、とも揶揄される習近平氏の道のりは険しいものとなろう。
(NHKスペシャル「中国激動 怒れる民をどう収めるか ~密着 紛争仲裁請負人~」、より)

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。