【歯のｹｱ､新たな常識】

最新の虫歯治療.
①.最新の虫歯治療は､『できるだけ､歯を削らない･神経を抜かない』方針｡
　削らない➜歯は硬いｴﾅﾒﾙ質で覆われており､削ると再生しない｡しかも削ると､周囲のｴﾅﾒﾙ質にﾋﾋﾞが入り､虫歯菌が侵入する危険性がある｡だから削らない｡
　神経を抜かない➜神経を取り除いた歯は､栄養が供給されず､枯れ木状態になってしまう｡ｸﾗｳﾝ(歯冠)を被せると､その下(元の歯)が再び虫歯になる等､最終的には抜歯が避けられない｡だから神経は抜かない｡
②.歯の残存本数が少ない程､認知症になるﾘｽｸが高い事が分かっているので､『削らない･抜かない』という歯の最新治療は､認知症発症ﾘｽｸも抑え得る｡

虫歯より怖い歯周病.
　最近は歯周病と､認知症･糖尿病･脳血管障害･心筋梗塞･動脈硬化など､全身の病気との関連が指摘されている｡
　歯周病とは歯肉炎と歯周炎の総称で､最初になるのが歯肉炎｡歯茎が赤く腫れ､歯を磨いた際に出血が見られる｡
　歯肉炎が進行すると歯茎が痩せて下がり､歯根が見えてくる｡これが歯周炎｡
　炎症が更に進行すると､歯が根元からｸﾞﾗｸﾞﾗとなり､やがて抜け落ちてしまう｡
③.歯肉炎の状態であれば､歯茎ﾌﾞﾗｯｼﾝｸﾞ(歯磨き)で出血は止まり､歯茎の腫れも改善する｡

歯磨き.
　虫歯と歯周病の予防には､毎日の歯磨きが欠かせない｡朝食を済ませた後で歯を磨くのは間違いだ｡
④.朝起きたら､先ずは歯磨き｡
　朝起きた時は口内細菌が最も多い｡歯磨き前に朝食を摂ると､それら細菌も体内に取り込まれ､高齢者の場合誤嚥性肺炎に繫がる危険もある｡

　理想の歯磨きは､次に示す三段階のｽﾃｯﾌﾟからなる｡
Ⅰ.先ずは､液体歯磨きで一分程うがいする｡すると､ﾌﾟﾗｰｸが柔らかくなって除去され易くなる｡その上､誤嚥防止の筋肉が鍛えられる｡
Ⅱ.その後､歯間ﾌﾞﾗｼやﾃﾞﾝﾀﾙﾌﾛｽ食べｶｽ等を除去する｡
Ⅲ.最後に､時間をかけてﾌﾞﾗｯｼﾝｸﾞする｡

⑤.歯磨き粉は､ﾌｯ素入りを使う｡
　ﾌｯ素は､虫歯菌の酸で溶かされてしまったCa(ｶﾙｼｳﾑ)やP(ﾘﾝ)が､再び歯に戻る(再石灰化)のを促す｡
　最近の練りﾊﾐｶﾞｷは､研磨剤の心配がないのでﾀｯﾌﾟﾘ使おう｡量の目安は､歯ﾌﾞﾗｼに2cm位｡
⑥.磨くﾀｲﾐﾝｸﾞは､食後30分ほど｡
　どんなに丁寧に歯を磨いてもﾌﾟﾗｰｸを完全に除去できない｡三ヶ月に一度は､歯科医院でﾌﾟﾗｰｸや歯石を除去するのがお勧め｡
⑦.歯列矯正をするのなら､三十代半ばまでに｡
　年を取るにつれて骨の形成能力が弱くなる｡そうなってから歯列矯正手術を行うと､歯槽骨や歯茎に変調を来す恐れがある｡したがって､歯列矯正は若い内(三十代半ばまで)にしたい｡

抜けてしまった歯の措置.
　歯が抜けてしまったら､人工歯を着ける『ﾌﾞﾘｯｼﾞ』という方法がある｡ﾌﾞﾘｯｼﾞを架けるためには､両脇の歯を削って土台を作らねばならない｡しかし最近は､削らないで装着できるｳｪﾙﾃﾞﾝﾂというﾀｲﾌﾟのﾌﾞﾘｯｼﾞも登場した｡ただし自費診療となり､十万円/本程度｡
⑧.また『ｲﾝﾌﾟﾗﾝﾄ』という手もある｡ｲﾝﾌﾟﾗﾝﾄは60代までとの意見もあるが､80代でもｲﾝﾌﾟﾗﾝﾄは可能｡
　ｲﾝﾌﾟﾗﾝﾄ手術のﾄﾗﾌﾞﾙを聞く｡それを避けるため､設備･技術･ｱﾌﾀｰｹｱの整った歯科医院(病院)に留意されたい｡

⑨.八十歳､九十歳になっても､歯や入れ歯に不具合あれば必ず治すこと｡
　噛む事は､認知機能の維持に関係する｡よく噛み､よく食べる事が長生きの秘訣｡したがって､歯の機能不全は必ず治しておこう｡

『良い歯科医』の選び方.
　ｺﾝﾋﾞﾆよりも数が多い歯科医院｡では､良い歯科医の探し方は？
　急な歯痛等でない限り､いきなり治療を始める歯科医は避けるべきだ｡
　若林歯科医院の若林健史･院長によると､｢初診時は､先ず歯のﾚﾝﾄｹﾞﾝ写真を撮り､更に歯周病の検査をし､歯の状態を把握する｡その上で､今後の治療方針を説明し､しかも､可能な限り歯を残す方向性を示してくれる歯科医院が良い｣､とのこと｡
⑩.｢待合室が混んでいる歯科医院は良い筈｣､というのは間違い｡
　そうした場合､治療の時間管理ができていない可能性がある｡利益を上げるために数をこなそうと､治療能力をｵｰﾊﾞｰした予約を取るため､治療のｸｵﾘﾃｨｰが低い可能性がある｡

　歯は再生しない器官であり､その治療を任せるが故､歯科医選びは慎重でありたい｡

注).上記にある①～⑩は､ﾀｲﾄﾙにある『｢歯｣の10大新常識』.

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★｢週刊文春｣6/27号『｢歯｣の10大新常識』､より.