【ネムリユスリカの有効利用】
人類の活動の場が、地球外へと拡大しつつある。
ただ、人体に有害な環境の星もあり、候補地は慎重に選ぶ必要がある。
理化学研究所(理研)や農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの研究チームは、『眠り姫』と言う昆虫を使って、人類が住める星を安全に探す研究に取り組んでいる。
宇宙大航海時代の到来.
米航空宇宙局(NASA)は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)・欧州宇宙機関・カナダ宇宙庁・民間宇宙飛行会社などと共に、2024年までに人類を月面に送るという、有人月面探査プログラム『アルテミス計画』を進めている。
月や火星は地球に近く、観測が容易で環境を把握し易い。月や火星に於ける活動が軌道に乗れば、新たな星の開拓を目指す宇宙大航海時代が来るだろう。
その際に必要なのが、人類が生活できる環境かどうかを調べる事だ。
無人探査機に観測機器を搭載して、水・大気・温度・有害物質の有無を調べるのは、効率が悪く、コストも掛かる。
マウスやサル等の実験動物を送って確認する手も考えられるが、飛行期間が数ヶ月から数年にも及ぶ事を考えると、現実的でない。
ここで真打ち登場.
そこで、理研や農研機構などのチームは、『眠り姫』という特殊な昆虫を利用する事を思い付いた。その昆虫の正式名称は『ネムリユスリカ』といって、ナイジェリアなどアフリカ北部の半乾燥地帯の水たまりに生息する蚊の一種だ。
その幼虫は、乾期になると水分を失ってカラカラに乾燥し、動きも代謝もない『乾燥無代謝休眠』という状態に入るが、乾期が過ぎて雨水などを浴びると1時間程度で覚醒し、再び活動を始める、という変わった性質を持つ。
休眠状態の幼虫は、過酷な環境を平気で生き抜く。乾燥したまま常温で17年以上生き続け、90度の高温に約1時間、マイナス270度の極低温に77時間耐えた。エチルアルコールに漬けても約1週間生存。
国際宇宙ステーション(ISS)で約2年半、宇宙空間に放置しても復活し、宇宙を飛び交う放射線の一種のガンマ線にも平気だった。
これほど過酷な環境に耐えられる休眠状態の幼虫は、数年にも及ぶ可能性がある探査機の飛行も、餌・水・酸素なしで大丈夫。そして人類の移住先候補の星に到着し、そこに水があれば復活する。
『バイオセンサー』としても利用可.
その後、水の有無以外の環境条件がどのような状態かを知らせる、『バイオセンサー』としても利用できる。
覚醒中の幼虫は、表面が微弱なマイナス電気を帯びており、体をくねらすなどして動くと、その様子を電気信号として捉えられる。この信号を分析すると、幼虫の動きを高精度に把握できる。
更に今後は、大気の組成や有害物質の有無など、条件が変化した時に幼虫がどう動くかについても、地球上で実験を行ってデータを大量に蓄積しておき、これらを人工知能(AI)で詳細に分析し、データベースを構築しておく。
こうした準備をしておけば、幼虫が実際に移住候補の星に行った時の動きと、データベースを照らし合わせ分析する事で、環境がどのような状態にあるか・気温・pH・大気組成の値・有害物資の濃度なども含めて把握できる
幼虫の動きの測定自体は、幼虫自身が出す電気を使うため、外部の電源は不要。測定した電気信号を探査機に送信する際、電源が必要になるが、腕時計や自動車のリモコンキーに使われる小さなボタン形のリチウム電池を利用すれば、12年にも及ぶ待機が可能で、長期に亘る宇宙飛行にも対応できる。
理研の田中陽・チームリーダーは、「生物と機械を融合させた今回のバイオセンサーは、ネムリユスリカを使う事で、天体の環境が生物の生存に適しているかどうか、簡単かつ確実に調べる事ができる。宇宙のみならず、地球上での環境モニタリングなどにも応用できるのではないか」、と話している。
●蚊というと、刺されてマラリア等で苦しむとの印象が強いが、こんな素晴らしい蚊もいるんだとビックリ。
★産経ニュース『【びっくりサイエンス】人類が移住できる星 「眠り姫」の昆虫で探せ 到来近づく宇宙生活時代』(2022/8/6)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220806-5WR4ZPEWNBMATCKNN7OIB2BIUA/
ただ、人体に有害な環境の星もあり、候補地は慎重に選ぶ必要がある。
理化学研究所(理研)や農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの研究チームは、『眠り姫』と言う昆虫を使って、人類が住める星を安全に探す研究に取り組んでいる。
宇宙大航海時代の到来.
米航空宇宙局(NASA)は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)・欧州宇宙機関・カナダ宇宙庁・民間宇宙飛行会社などと共に、2024年までに人類を月面に送るという、有人月面探査プログラム『アルテミス計画』を進めている。
月や火星は地球に近く、観測が容易で環境を把握し易い。月や火星に於ける活動が軌道に乗れば、新たな星の開拓を目指す宇宙大航海時代が来るだろう。
その際に必要なのが、人類が生活できる環境かどうかを調べる事だ。
無人探査機に観測機器を搭載して、水・大気・温度・有害物質の有無を調べるのは、効率が悪く、コストも掛かる。
マウスやサル等の実験動物を送って確認する手も考えられるが、飛行期間が数ヶ月から数年にも及ぶ事を考えると、現実的でない。
ここで真打ち登場.
そこで、理研や農研機構などのチームは、『眠り姫』という特殊な昆虫を利用する事を思い付いた。その昆虫の正式名称は『ネムリユスリカ』といって、ナイジェリアなどアフリカ北部の半乾燥地帯の水たまりに生息する蚊の一種だ。
その幼虫は、乾期になると水分を失ってカラカラに乾燥し、動きも代謝もない『乾燥無代謝休眠』という状態に入るが、乾期が過ぎて雨水などを浴びると1時間程度で覚醒し、再び活動を始める、という変わった性質を持つ。
休眠状態の幼虫は、過酷な環境を平気で生き抜く。乾燥したまま常温で17年以上生き続け、90度の高温に約1時間、マイナス270度の極低温に77時間耐えた。エチルアルコールに漬けても約1週間生存。
国際宇宙ステーション(ISS)で約2年半、宇宙空間に放置しても復活し、宇宙を飛び交う放射線の一種のガンマ線にも平気だった。
これほど過酷な環境に耐えられる休眠状態の幼虫は、数年にも及ぶ可能性がある探査機の飛行も、餌・水・酸素なしで大丈夫。そして人類の移住先候補の星に到着し、そこに水があれば復活する。
『バイオセンサー』としても利用可.
その後、水の有無以外の環境条件がどのような状態かを知らせる、『バイオセンサー』としても利用できる。
覚醒中の幼虫は、表面が微弱なマイナス電気を帯びており、体をくねらすなどして動くと、その様子を電気信号として捉えられる。この信号を分析すると、幼虫の動きを高精度に把握できる。
更に今後は、大気の組成や有害物質の有無など、条件が変化した時に幼虫がどう動くかについても、地球上で実験を行ってデータを大量に蓄積しておき、これらを人工知能(AI)で詳細に分析し、データベースを構築しておく。
こうした準備をしておけば、幼虫が実際に移住候補の星に行った時の動きと、データベースを照らし合わせ分析する事で、環境がどのような状態にあるか・気温・pH・大気組成の値・有害物資の濃度なども含めて把握できる
幼虫の動きの測定自体は、幼虫自身が出す電気を使うため、外部の電源は不要。測定した電気信号を探査機に送信する際、電源が必要になるが、腕時計や自動車のリモコンキーに使われる小さなボタン形のリチウム電池を利用すれば、12年にも及ぶ待機が可能で、長期に亘る宇宙飛行にも対応できる。
理研の田中陽・チームリーダーは、「生物と機械を融合させた今回のバイオセンサーは、ネムリユスリカを使う事で、天体の環境が生物の生存に適しているかどうか、簡単かつ確実に調べる事ができる。宇宙のみならず、地球上での環境モニタリングなどにも応用できるのではないか」、と話している。
●蚊というと、刺されてマラリア等で苦しむとの印象が強いが、こんな素晴らしい蚊もいるんだとビックリ。
◇
★産経ニュース『【びっくりサイエンス】人類が移住できる星 「眠り姫」の昆虫で探せ 到来近づく宇宙生活時代』(2022/8/6)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220806-5WR4ZPEWNBMATCKNN7OIB2BIUA/
2022-08-10 10:13
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0