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【半導体立国、復活】

 かつて日本経済を牽引していた半導体産業は現在、米国や中国などに大きく後れを取っている。
 だが、産業技術総合研究所などの研究チームは、最近、コーヒーなどの植物に含まれるカフェ酸を電極に使う事で、今後の用途拡大が期待される次世代半導体である『有機半導体』の性能を、100倍も向上させる事に世界で初めて成功。バイオマス由来のため、環境負荷の軽減につながり、日本の苦境を救う新技術にもなりそうだ。

次世代の主役は有機半導体.
 平成の中頃まで、日本の半導体は世界をリードしてきた。だが、開発投資戦略の失敗や、米国・中国・台湾などの台頭で国際競争に負け、今やその面影はない。
 ただ、コンピューター・通信機器・自動車・家電など、あらゆる電子機器に欠かせない半導体は、経済安全保障の観点から、研究開発力や生産力を確保しておく必要がある。
 そのため日本政府は、巨額補助金を投じて研究開発拠点・生産拠点の誘致に着手。
 また米政府と、次世代半導体の研究開発拠点整備で合意し、劣勢挽回を目指している。

有機半導体.
 これまで使われてきた半導体の大半は、無機物のシリコンを主な材料として作られた無機半導体だった。この材料を、炭素同士の結合が骨格の有機化合物に置き換えたものが、有機半導体と呼ばれる。
 この有機半導体が、次世代の主役になると見られている。

長所.
 無機半導体の製造が大規模な装置を必要とするのに対し、有機半導体は、基板に材料を塗布するだけで簡便に作れる。これは大きな長所と言えよう。。
 また、柔軟なため曲げる事ができ、新たな用途を幅広く開拓できるのではないかと期待が広がる。既に、有機ELディスプレーや、画面を折り畳みできるスマートフォンなど、一部で実用化が始まっている。

短所.
 だが弱点もある。半導体は電流量が多いほど高性能と言えるが、有機半導体は電流量が少ない。
 更なる実用化の拡大には、電流量の向上が大きな課題となっている。

性能向上への道.
 あらゆる電子機器に大量に使われている半導体は、廃棄された場合、生物による分解が困難で、環境への負荷が非常に大きい。
 だがバイオマス由来なら、生物が容易に分解でき、環境への負荷が減り、循環型社会に適合している。
 研究によると、電流を通し易くするには、植物が作り出すフェニルプロパノイドと呼ばれる物質群が適している、と分かった。
 その物質群の一つで、コーヒーを始めとした植物に含まれるカフェ酸という物質を試してみた。カフェ酸は、抗酸化作用を持つポリフェノールという物質の一種で、分子内の電荷分布が非常にはっきりしており、入手が容易で価格も安い。
 そこで、電極にカフェ酸を吹き付けて電流を通してみたところ、約100倍もの電流が通るようになった。
 環境に優しいバイオマス由来の物質を使って、有機半導体に効率的に通電させる事に成功したのは世界で初めて。

 産業技術総合研究所などの研究チームは、今後、更に電流の量を増やせるよう研究を重ね、有機半導体の性能向上を目指す。
 日本発の技術により、高性能で環境に優しい有機半導体が実現すれば、日本の半導体分野に於ける苦境脱出の一助になるかも知れない。


★産経ニュース『【クローズアップ科学】コーヒーのカフェ酸で半導体の性能が100倍に 日本の苦境救う新技術』(2022/12/11)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20221211-U6D5ZLGDDRLRRPYDG6GPAXC53A/

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