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【国是って何?】

 ロシアのウクライナ侵攻を機に、日本の国防論議が熱を帯びてきた。
 敵基地攻撃能力の保持や核共有を主張する保守・右派は、専守防衛や非核三原則の見直しを主張する。
 しかし、国是とは何なのか。憲法と国是はどのような関係にあるのか。

 防衛白書によると専守防衛とは、「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限に留め、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限る等、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢」、とある。
 そもそも防衛白書は、時の政府の国防戦略に過ぎない。非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)は、首相施政方針演説の一内容である。何れも憲法どころか、法律・政令・省令ですらない。
 にも拘わらず、いつの間にか『国是』と呼ばれ、憲法よりも高次の規範の様に振る舞っている。
 憲法9条の定めは、「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」であり、『侵略戦争』を放棄すると宣言しているだけだ。
 相手から武力攻撃を受けた時、初めて防衛力を行使する“専守防衛”を明示している訳でも、相手の武力攻撃前の“先制攻撃”という特定の防衛戦略・戦術を禁止している訳でもない。
 専守防衛が国是だとすれば、日本は相手から武力攻撃を受けるまで防衛力を行使する事ができない。
 憲法9条が命じてもいない専守防衛に固執し、非現実的な安全保障政策を続けていれば、抑止力は低下し、戦争の誘因にもなり兼ねない。

国是を捨てたフィンランドとスウェーデン.
 国連憲章51条は、個別的・集団的自衛権の行使が全ての加盟国の固有の権利としている。
 これは、平時には違法となる武力行使も、他国による武力攻撃(=侵略)を撃退するためであれば違法ではなくなるという事だ。
 殆どの国は、独力で正当防衛を全うできないため、地域的集団安全保障や軍事同盟の枠組みに自国を組み込んでいる。
 フィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請したのも、共同防衛による抑止力を確保するためだ。
 自国を守る強固な意志を持つもつ国は、その目的に適わなくなった国是と心中する愚は犯さない。

“必要最小限”の防衛力?
 自衛というコトバには、物事を過小に見せかける隠蔽効果がある。憲法9条がら見て自衛権の行使が取り沙汰される時、必ずといっていいほど“必要最小限”という修飾語が免罪符のように付いて回る。
 どの程度が必要最小限かは、侵略国の軍事力によって決まるので、「防衛費はGDPの何%」などという議論は意味をなさない。
 このような不確定概念に防衛費の歯止め効果を期待する心理は、全く以て理解不能である。

“専守防衛”などのコトバの呪縛を解こう.
 ロシアのウクライナ侵攻は、「平和を愛する諸国民の公正と信義」(憲法前文)など、現実には存在しない事を明らかにした。
 特に愚かで罪深いのは、憲法が直接命じている訳でもない、その時々の国防戦略の一つに過ぎない“専守防衛”、などのコトバを国是として墨守し、これと心中する事である。9条を巡るコトバの呪縛を解かなければならない。


★産経ニュース『専守防衛は国是だと誰が決めた?』(日大教授・池田実氏)、(2022/5/23)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220523-DLWBS4ZYG5ISVHUOVNR2XITES4/

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