【プーチン大統領の白昼夢】
25年前の1991年12月、ソ連邦は崩壊した。
糾合しない旧構成国.
揺り戻し等の紆余曲折で、その後、ソ連邦復活の試みは後を絶たない。
「ソ連崩壊は無念千万」、プーチン大統領がこの様な思いを抱いている事は間違いない。
崩壊について、大統領は2つの発言をしている。
先ず2003年、「ソ連崩壊を惜しまない者には心(ハート)がない。だが、その復活を欲する者には頭(ブレーン)がない」。
もう一つは2005年の有名な発言、「ソ連邦の解体は、20世紀最大の地政学的な大惨事であった」。
後者の方が本音に近く、『ミニ・ソ連邦』の復活こそが、プーチン氏の強い願望に違いない。
ユーラシア連合.
2011年、プーチン氏は『ユーラシア連合』構想を発表した。
旧ソ連邦構成諸国の内、既に欧州連合(EU)や、北大西洋条約機構(NATO)に加盟済みのバルト三国を除き、なるべく多くの国々を糾合してロシア指導の下、『ミニ・ソ連』を創ろうというスキームだ。
ところがその後、『ユーラシア経済連合』と名称を改める等、内容を若干修正したにも拘わらず、参加を決定したのは、ロシア・カザフスタン・ベラルーシ・キルギス・アルメニアの5ヶ国に過ぎなかった。何れも自国内に多くのロシア系住民を抱えるか、経済的・軍事的理由から、要請を断れない弱みを持つ国々だ。
ウクライナを敵に回してしまった.
他方、ジョージア・ウクライナ・アゼルバイジャン・モルドバといった有力な旧ソ連構成諸国は、同連合への参加をボイコットした。
これら4ヶ国は、それぞれの頭文字をとった『GUAM』と名乗る組織を形成し、モスクワの覇権主義を嫌い、ロシアから距離を置く姿勢を明確にしていた。
ロシアは、2008年夏のジョージア侵攻、2014年3月のクリミア併合によって、ジョージア、ウクライナを明らかに敵に回した。更に、モルドバやアゼルバイジャンの反発も招いてしまった。
中でも、ウクライナを『ミニ・ソ連』プロジェクトから離反させただけでなく、EUやNATOの方へ事実上追いやる結果を招いた事は、ロシアにとって大きなマイナスだった。
というのも、ウクライナは地理・人口・国力などから見て、旧ソ連構成諸国の中で群を抜く重要な地位を占めているからである。プーチン氏発案の『ユーラシア連合』の成否は、ウクライナが参加するか否かに懸かっていた、と言っても過言ではない。
戦術家・プーチン氏の過ち.
ロシアがクリミアを獲得した代償は実に大きかった。
主要8ヶ国(G8)からの追放・経済制裁・ミニ冷戦の発生、特にウクライナ全体を失ってしまったのは大きい。
戦術家・プーチン氏は、何故その様な戦略上の過ちを犯してしまったのであろうか。
筆者(木村汎氏)は、次の様に考える。
クリミア併合の決断は、4名のKGB(元ソ連秘密警察)の勤務経験者で決定し、外務省関係者は加わっていなかった。
因みにKGBは、プーチン氏の“ふるさと”である。
「最重要決定は、心でなく頭で行うべし」、との己が述べた至言を、プーチン氏自ら常に実行している訳ではなかった。
●プーチン大統領のウクライナ侵攻は、“唯々侵攻”の感ありで、「?」だった。この産経の記事を読み、「なーるほど」と納得。
★産経ニュース『【正論】「ミニ・ソ連」再興こそがプーチン大統領の白昼夢なのだ』(北海道大学名誉教授・木村汎氏)、(2016/1/8)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20160108-IWPIKXKUZRLNNA6KM5VGW7JG2I/
糾合しない旧構成国.
揺り戻し等の紆余曲折で、その後、ソ連邦復活の試みは後を絶たない。
「ソ連崩壊は無念千万」、プーチン大統領がこの様な思いを抱いている事は間違いない。
崩壊について、大統領は2つの発言をしている。
先ず2003年、「ソ連崩壊を惜しまない者には心(ハート)がない。だが、その復活を欲する者には頭(ブレーン)がない」。
もう一つは2005年の有名な発言、「ソ連邦の解体は、20世紀最大の地政学的な大惨事であった」。
後者の方が本音に近く、『ミニ・ソ連邦』の復活こそが、プーチン氏の強い願望に違いない。
ユーラシア連合.
2011年、プーチン氏は『ユーラシア連合』構想を発表した。
旧ソ連邦構成諸国の内、既に欧州連合(EU)や、北大西洋条約機構(NATO)に加盟済みのバルト三国を除き、なるべく多くの国々を糾合してロシア指導の下、『ミニ・ソ連』を創ろうというスキームだ。
ところがその後、『ユーラシア経済連合』と名称を改める等、内容を若干修正したにも拘わらず、参加を決定したのは、ロシア・カザフスタン・ベラルーシ・キルギス・アルメニアの5ヶ国に過ぎなかった。何れも自国内に多くのロシア系住民を抱えるか、経済的・軍事的理由から、要請を断れない弱みを持つ国々だ。
ウクライナを敵に回してしまった.
他方、ジョージア・ウクライナ・アゼルバイジャン・モルドバといった有力な旧ソ連構成諸国は、同連合への参加をボイコットした。
これら4ヶ国は、それぞれの頭文字をとった『GUAM』と名乗る組織を形成し、モスクワの覇権主義を嫌い、ロシアから距離を置く姿勢を明確にしていた。
ロシアは、2008年夏のジョージア侵攻、2014年3月のクリミア併合によって、ジョージア、ウクライナを明らかに敵に回した。更に、モルドバやアゼルバイジャンの反発も招いてしまった。
中でも、ウクライナを『ミニ・ソ連』プロジェクトから離反させただけでなく、EUやNATOの方へ事実上追いやる結果を招いた事は、ロシアにとって大きなマイナスだった。
というのも、ウクライナは地理・人口・国力などから見て、旧ソ連構成諸国の中で群を抜く重要な地位を占めているからである。プーチン氏発案の『ユーラシア連合』の成否は、ウクライナが参加するか否かに懸かっていた、と言っても過言ではない。
戦術家・プーチン氏の過ち.
ロシアがクリミアを獲得した代償は実に大きかった。
主要8ヶ国(G8)からの追放・経済制裁・ミニ冷戦の発生、特にウクライナ全体を失ってしまったのは大きい。
戦術家・プーチン氏は、何故その様な戦略上の過ちを犯してしまったのであろうか。
筆者(木村汎氏)は、次の様に考える。
クリミア併合の決断は、4名のKGB(元ソ連秘密警察)の勤務経験者で決定し、外務省関係者は加わっていなかった。
因みにKGBは、プーチン氏の“ふるさと”である。
「最重要決定は、心でなく頭で行うべし」、との己が述べた至言を、プーチン氏自ら常に実行している訳ではなかった。
●プーチン大統領のウクライナ侵攻は、“唯々侵攻”の感ありで、「?」だった。この産経の記事を読み、「なーるほど」と納得。
◇
★産経ニュース『【正論】「ミニ・ソ連」再興こそがプーチン大統領の白昼夢なのだ』(北海道大学名誉教授・木村汎氏)、(2016/1/8)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20160108-IWPIKXKUZRLNNA6KM5VGW7JG2I/