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【タリバンと中国、いずれは衝突】

『帝国の墓場』アフガニスタン.
 中央アジアきっての文明の都市でもあったカブールは、今やテロと欲望の巣窟に変わり果てようとしている。
 19世紀から新興の帝国が相次いで、この堅牢な要塞都市を掌中に収め、自身の植民地を構築しようとした。

【大英帝国】
 インドを征服した大英帝国は、更に北上してアフガンに入ったものの、2度も惨敗した。
 中央アジアを支配下に置き、更に南下する勢いを見せていた、帝政ロシアを食い止めようとしたのである。

【ソビエト連邦】
 20世紀になると、ユーラシア全体を社会主義一色に染めたソ連は、1979年にアフガニスタンに侵攻し、親ソ政権に肩入れしようとしたものの、自身の崩壊の引き金を引いてしまった。
 美しいカブールを都とする国は、再び『帝国の墓場』と化したのである。

【米国】
 ソ連の侵略に抵抗していた聖戦士ムジャヒディンを、誰よりも支援していたのは米国だった。
 その米国に牙を牙をむいた聖戦士の隊列にウサマ・ビンラーディンがいた。ソ連も米国もその価値観は自分たちのイスラム的理念に合致しない『邪悪な存在』だとして理解したからだろう。
 2001年の『9・11テロ』の首謀者とされたビンラーディンをアメリカに引き渡せ、との要求に、アフガンの神学生からなる武装勢力・タリバンは匿った。友を敵に引き渡すことは遊牧民の価値観に合わないからだ。
 そうして起きたアフガン戦争は20年間も続き、遂にバイデン米大統領は撤収を命じて混乱を収拾しようとしたが、逆にテロが発生してしまった。
 米軍のアフガン撤退は、余りにも粗末な作戦だったが、これ以上『帝国の墓場』に、ワシントンは嵌(はま)りたくなかったのだろう。

【中国】
 東方から触手を伸ばす中国。米軍の作戦が泥沼化しつつあった時から、中国軍は既に敵側のタリバンの支配地で活動していた。
 幽霊のように動く中国軍の存在をいち早く察知したのはモンゴル軍だ。
 「タリバンがアフガニスタンを牛耳れば、中国がやって来る」、とモンゴル軍の将校は語っていた。それが今、現実となったのだ。
 中国が狙っているのは、実は、アフガニスタンの銅鉱と石油である。
 タリバンが中国に期待しているのは、国連安全保障理事会常任理事国としての承認と経済的援助だ。
 銅鉱が埋蔵されている地に古代の仏教遺跡が人類の遺産として立ち並ぶが、バーミヤン渓谷の大仏も破壊したタリバンには、それへの関心がない。その点、現世利益を優先とする中国とタリバンは、利害関係は生じない。

タリバンと中国はいずれ衝突する.
 タリバンと中国はいずれ衝突する。厳格なイスラム法に基づく建国と統治を理想とするタリバンが、超原理主義者であるのに対し、中国は超現実主義者であるからだ。
 横柄な対外交渉を進めてきた中国の『戦狼』外交官は、儒教のマスクを被ってカブールに残る。孔子学院をカブールに設置してイスラム世界に進出しようとするが、その活動をタリバンがどこまで許容するのか。
 『帝国の墓場』は早晩、中国の野望を葬る地となるだろう。

●そもそもイスラム原理主義のタリバンが、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧を知らぬ筈がない。『鉄仮面外交』の後、両国関係が破綻するのは見え見え。


★産経ニュース『【正論】「帝国の墓場」 アフガンと中国』(文化人類学者・静岡大学教授、楊海英氏)、(2021/9/6)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20210906-YXLHSRYII5PO7EHRVACXQZFCMQ/

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