SSブログ

【債務の罠とスリランカ】

中国の『債務の罠』.
 インド洋の島国・スリランカの最大都市コロンボで、中国資本による大規模開発事業が進んでいる。
 コロンボ港に隣接する埋め立て地269ヘクタールに、金融センター・商業地区・カジノなどを整備し、経済特区とする計画だ。
 埋め立て地の約4割は中国企業への99年間のリースが決まっている。「第二のハンバントタ港になりかねない」、とも懸念されている。その有様を市民は次の様に皮肉っている、「ミニ中国」。
 ハンバントタ港は2017年、スリランカが中国への債務返済に窮し、99年契約で運営権を貸与した。巨大経済圏構想『一帯一路』を進める中国の『債務の罠』の典型例だ。
 中国は近年、インド洋の戦略的要衝であるスリランカに、積極的に融資を進めてきた。同国で2019年、大統領に就いたゴタバヤ・ラジャパクサが対中依存を強め、負担が増す対外債務の返済の調整を中国に求めた。スリランカ国内では政府への抗議デモが広がり、非常事態宣言に追い込まれた。

日本の主権回復の恩人.
 コロンボ市議のプラディプ・ジャヤワルデネ(62)は、国の窮状にもどかしさを募らせ、「祖父が大統領だったら、ここまで中国に接近していない」、と語る。祖父とは、元大統領のジュニウス・リチャード・ジャヤワルデネである。
 彼は、1951年9月のサンフランシスコ講和会議で、スリランカ(当時はセイロン)代表を務めた、日本の主権回復の恩人である。
 サンフランシスコ講和条約では、連合国が日本への賠償請求権を原則放棄し、請求する場合でも、現金ではなく技術や労働力による『役務賠償』に限った。
 1950年、朝鮮戦争などの冷戦が始まり、米国が戦略的に重要な日本の負担を軽減し、安定を重視した結果だが、戦時中、日本に占領されたアジア諸国は不満だった。
 ジャヤワルデネは講和会議の演説で、「憎しみは憎しみによっては止(や)まず、ただ愛によってのみ止む」、とブッダの言葉を引用して賠償請求権の放棄を宣言し、日本の独立がアジアに資すると説いた。
 ジャヤワルデネのこの演説が、他の国々を動かしたとされ、日本の全権代表で首相の吉田茂は、メガネを外して涙を拭った(ぬぐった)という。

その後の日本、賠償・援助.
 日本はその後、アジア諸国に賠償を行い、『償い』も込めて無償資金協力や借款などからなる政府開発援助(ODA)を通じ、その発展を支えた。スリランカへの円借款は計1兆1千億円。日本の支援で整備されたインフラは、今も現地紙幣のデザインに使われている。
 周辺が『ミニ中国』化するコロンボ港もその一つ。前記のプラディプ(コロンボ市議)は、「日本の援助が国の発展に寄与した事は誰もが認める。中国の支援が国を蝕むのは、残念でならない」と嘆く。

中国による借金漬け.
 「プロジェクトの審査の甘さが問題」。早稲田大教授(国際開発論)の北野尚宏は、各地で顕在化する中国による『借金漬け』の原因をこう解説する。
 中国も近年、対外援助の所管を商務省から新設した国務院(政府)の直属機関に移し、借り入れ国の債務や事業の経済性に配慮するようになったという。
 がしかし、スリランカ下院議員のビジタ・ヘラスは、「日本が港を奪い取ったか。背後に潜む野心の有無が違う」、と語っている。

●『吉田茂の涙』が印象的だった。
敬称略.


★産経ニュース『【主権回復】第2部 サンフランシスコ講和条約70年(4)中国に侵食される「恩人」 スリランカを債務のわなから救え』(2022/3/4/6)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220406-GUHVXDKZ3NKQHJV3YYU2D7VHCU/

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。