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【iPS細胞研究所々長・山中伸弥氏、退任】

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発で、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥氏(59)が、3月末、京都大iPS細胞(人工多能性幹細胞)研究所の所長を退任する。
 iPS細胞は、再生医療や創薬に有用な万能細胞である。開発から約16年が経ち、医療への実用化段階に入ったiPS細胞と、山中氏の歩みを振り返る。

再生医療、実用化の課題.
 前例のない医療応用なので、安全性への慎重な検討が必要で、そのため、計画の遅れが課題となっている。
 山中氏がiPS細胞の研究を始めた頃、人の受精卵から作られた万能細胞・胚性幹細胞(ES細胞)の研究が進んでいた。他人の細胞を移植するため拒絶反応や、受精卵を使う生命倫理上の課題があった。
 iPS細胞はその人の皮膚や血液などの体細胞から作られており、ES細胞の課題(拒絶反応・倫理問題)を解決した。

『心臓病=死』の恐怖から脱却.
 「iPS細胞の登場で、『心臓病では死なない』との目標は実現に近い」、と語るのはiPS細胞由来の心筋シートを重症心不全患者へ移植する世界初の再生医療に取り組んでいる、大阪大の澤芳樹・特任教授(66)だ。
 心不全の国内患者は推計100万人以上で、重症化すると心臓移植や人工心臓以外に治療法がない。
 iPS細胞由来の心筋シートの移植は3例実施され、安全・有効性を検証した上で、令和6年にも製品化の見込みだが、「安全性を慎重に見極める必要がある」等の理由で、数年から約10年の遅れが生じている。
 更に、治験を経ての実用化には巨額の開発費用が必要となる。iPS細胞関連事業には、数百億円の投資がある米国に比べ、日本の投資額は、その10分の1~100分の1だ。
 関連事業を手がけるバイオベンチャーの男性役員は、「日本は幾つかの研究で世界トップを走っているが、このままでは、実用化の段階で海外に追い抜かれる」、との懸念を示している。

研究費、特許料など.
 研究所には国などから研究費が交付されるが、実用化までの道のりを考えると、自前で財源を確保する必要性があった。
 山中氏は、iPS細胞研究所の資金集めのため、自らマラソンに参加するなど、『広告塔』として対外活動に取り組んだ。マラソンを通じての寄付は上手くいった。

 iPS細胞の普及に欠かせない別の一手が、知的財産保護だ。
 そのために財団を設立し、次々と関連の特許を取得した上で、非営利の学術機関などには無償で使用を認め、研究開発を加速させてきた。
 山中氏には、iPS細胞で患者さんを救うためにも、研究を止めてはならないとの強い思いが感じられる。

●難病患者のため、山中氏に期待したい。


★産経ニュース『「心臓病で死なない世界」実現の鍵は 山中伸弥氏iPS開発16年』(2022/3/22)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220322-TJVGSJLC3RKZJFRZPO6NCVFRFY/

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