SSブログ

【石炭利用の新技術】

 電力源エネルギーの多くを輸入に頼る日本では、様々なエネルギーをバランスよくミックスさせる事が、リスク回避に繫がる。
 電力源エネルギーに於いて石炭は、有力な選択肢の一つだが、温室効果ガスの削減という世界の潮流の中、他のエネルギーに比べて燃焼時に排出される二酸化炭素(CO₂)が多い事から風当たりが強い。

従来の『火力』のイメージを覆す.
 既存の微粉炭(石炭)火力発電は、石炭を燃焼した熱によって発生した蒸気で、蒸気タービンを回して発電する。
 しかし、大崎クールジェン(広島県。中国電力&電源開発の共同出資会社)の『石炭ガス化複合発電』(IGCC)は、
①.ガス化炉で酸素を送り込みながら石炭をガス化し ➜ ②.熱回収ボイラーで熱を回収した後 ➜ ③.ガスを燃焼して蒸気を発生し、ガスタービンを回して発電すると共に ➜ 回収された熱も使って発生した蒸気で蒸気タービンを回す、という“二刀流”の発電を行う。
 2つの発電システムで発電する事から、微粉炭火力を上回る効率的な発電ができる。

 大崎クールジェンで分離・回収されたCO₂は、島内の同施設に隣接するNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のカーボン・リサイクル実証研究拠点にパイプラインで送られ、CO₂のリサイクルの技術開発や実証実験が行われる。
 同拠点は『実証研究エリア』『藻類研究エリア』『基礎研究エリア』の3区域で構成される。

CO₂を吸収するコンクリート.
 『実証研究エリア』で行われる研究テーマの1つが、CO₂吸収コンクリート『CO₂-SUICOM(スイコム)』だ。
 スイコムでは、CO₂と反応して固まる特殊な材料(γ-C2S)をコンクリートに混ぜ、炭酸化とよばれるメカニズムによって固まる際、CO₂を吸収・固定する。セメント製造時の排出CO₂を上回る量を削減、吸収・固定し、コンクリート製造時の排出量をゼロ以下にする『カーボン・ネガティブ』を達成している。

CO₂で藻類培養し航空燃料に.
 『藻類研究エリア』では、CO₂を吸収する微細藻類由来のバイオジェット燃料(SAF=持続可能な航空燃料)製造のための研究開発を行っている。
 カーボン・ニュートラルを達成するためには、航空分野でのCO₂削減も不可欠で、SAFの導入が重要となる。
 政府は、2030年に航空燃料の10%をSAFにする目標を掲げており、国内外で商用のSAF生産がまだ殆ど行われていない中、生産の基盤技術の確立が急務となっている。

アジアや東欧に大きな貢献.
 天然ガスや石油といった石炭以外の化石燃料は、供給国が偏っているが、石炭は欧米・アジア・オセアニアなど幅広い地域に分布しており、供給リスクが少ない。
 また埋蔵量も豊富な事から価格も抑えられ、他のエネルギーにシフトした場合に懸念される、電気料金の過度の上昇の抑制にも寄与する。
 石炭の燃焼によるCO₂の分離・回収からリサイクルまでの取り組みを着実に進め、これら世界最高レベルのクリーン・コール・テクノロジー(CCT)を、石炭依存度の高いアジアや東欧の国々に提供できれば、経済発展と国際的な環境改善に大きな貢献となる。
 また今後、国際競争力を持つ日本発の新たな産業としても育つ可能性を持っている。


★産経ニュース『世界に誇る日本発の技術、石炭利用に伴うCO₂をリサイクルし コンクリートやジェット燃料に…最前線の取り組みと分離・回収、CCSの動向』(2022/8/29)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/article/20220829-FAIRQHATTZFVTECQHG7HLCTNVQ/

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。