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【「エアポケット」を事前に検知、JAXA】

 飛行機にとって乱気流による「エアポケット」は厄介な存在で、事前に検知するのが困難なもの。
 エアポケットに巻き込まれると機体は上下に激しく揺れ、数秒で数百メートルも急降下する場合がある。
 1966年には富士山上空で、エアポケットに巻き込まれた英国海外航空機が空中分解し、124名全員が死亡する大惨事が発生している。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米航空機大手のボーイング社と共同で、エアポケットを事前に検知できる装置を開発し、5年後をめどに実用化を目指している。

電波レーダーでは検知不可.
 エアポケットは、「晴天乱気流」によって引き起こされる下降気流である。乱気流は積乱雲のような雲の中だけではなく、雲の上でも起きる。雲の上は晴れており、そこで発生する乱気流を晴天乱気流という。
 雲の中で起きる乱気流であれば、飛行機から電波を発射し、雲の水滴にぶつかって反射してくる電波を捉えることで検知できるが、エアポケットは雲のない場所で発生するため、雲の水滴からの電波反射は期待できず、電波レーダーによる検知は不可能。

赤外線で検知可能.
 そこでJAXAは三菱電機と共同で、乱気流を検知し事故を防止するシステムの開発を進めている。
 具体的には、機体に搭載した「ドップラーライダー」という装置から赤外線パルスを発射し、エアポケット内で激しく飛び回っている塵や氷の微粒子感知し、エアポケットを事前に検知するというもの。
 それで、エアポケットに遭遇するまでの時間・距離・風の強さや向きが分かる。小型ジェット機を使った実験では、平均17・5キロ先の乱気流を検知できるのが確認できた。時間に換算すると、エアポケットに遭遇までに70秒ほどの余裕ができ、乗客にシートベルトの着用を促すことができる。
 エアポケットを検知しても、高速で飛行する航空機が回避できるとは限らない。無理な回避はむしろ危険な場合もある。
 そこで重要になるのが、機体の揺れを低減する技術だ。ドップラーライダーのデータを基に揺れを短時間で予測し、主翼の後ろ側に取り付けた補助翼を作動させて機体を制御すれば、揺れを半分程度に抑えられる。

ボーイングも評価.
 JAXAは今年3月、ボーイングとの飛行試験を開始し、検知技術の信頼性などを検証している。
 装置は小型軽量で搭載し易いのが特徴で、JAXAからの技術移転で三菱電機が商品化する見通し。ボーイングは、「世界で最高のシステムの一つ」と評価しており、同社機に搭載される可能性がある。
 JAXAの井之口浜木・研究領域主幹は、「基礎研究から始めて20年、実用化へあと一歩のところまで来た。できるだけ飛行機の事故を減らしたい」、と意気込んでいる。


★産経ニュース『【クローズアップ科学】見えない乱気流から飛行機を守れ 過去に死傷事故、JAXAとボーイングが検知実験開始』(2018.4.15)、より.
★上記へのリンク https://www.sankei.com/economy/news/180415/ecn1804150003-n1.html

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