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【核シェアリング】

『力の均衡』が日本を守る.
 政府にとって、国家の安全保障は最大の課題・目的である。
 それに欠かせないのが『究極的な抑止力』、つまり、究極的な破壊力を持つ核兵器がもたらす『力の均衡』だ。互いに相手を破壊尽くせるだけの核兵器を持った国同士が対決すると、結果的に戦いを避け得る、というパラドックス(逆説)に立脚している。
 冷戦下、日本が平和を維持できたのは、『平和憲法』ではなく『力の均衡』、つまり、アメリカの核(核の傘)のお陰。アメリカとの同盟は、アメリカの『核の傘』の下に入る事に最大の意味があり、日本が中国・北朝鮮・ロシアなどの核保有国に囲まれている現在、他に選択肢はない。

宇宙分野での優位と安全保障.
 アメリカが冷戦でソ連を制したのは、宇宙分野に於ける圧倒的な優位性であり、その事実に基づき、中国はアメリカの優位性に風穴を開けるべく蠢いている。そのためアメリカは、中国に強い危機感を抱いている。それが、最近の対中貿易戦争の一因にもなっている。
 であるから、日本が偵察衛星・測位衛星・通信衛星、更には、それらを破壊するような動きを警戒するSSA(宇宙状況監視)の開発や強化に注力するのは、アメリカにとってはプラスであり望ましい。そして、日本が宇宙分野とそれを支えるサイバー分野で高い技術を持ち続ける事は、アメリカが日本を守る更なる動機になり得る。
 北朝鮮が、日本に対して敵対行動に出た場合、アメリカをして、「核兵器を使ってでも日本の脅威を除去する」と決断させるためにも、宇宙・サイバー領域は最重要分野であり、日米同盟の深化にも大きく寄与する。
 日米同盟の肝は核抑止力だが、それに実効性を持たせるためには、日本も安全保障分野で相当の努力をしなければならないし、技術力や製造力を常に磨き続けねばならない。

専守防衛について.
 相手を破壊尽くせるだけの兵器をも持った国同士は、結果的には戦わずに済む。この観点に立てば、強い抑止力を持つ事が専守防衛の要となる。
 盾しか持たず、抑止力を欠いた安全保障環境では、逆に、敵の攻撃を誘発し兼ねない。

核シェアリング.
 北朝鮮の非核化は望み薄だが、北朝鮮の核に対する抑止力は何ら講じられていない。
 その対策は難儀だが、参考となる前例がある。冷戦下の欧州で、ソ連が配備した中距離弾道ミサイル『SS20』に対抗し、『NATO』(北大西洋条約機構)はアメリカの『パーシングⅡ』を導入した。ソ連はその『パーシングⅡ』を欧州から撤去させるため、『SS20』を全廃せざるを得なかった。
 それを教訓に、アメリカの核を同盟国で共有する『核シェアリング.』が案出された。その核を使用するに当たってはアメリカの同意が必要になろうが、日本が核を使用できるとすれば、東アジアの安全保障環境は、かつての欧州のように劇的に改善する可能性が出て来る。

 中国は現在、北朝鮮の“火遊び”を、アメリカに対する好ましい牽制球だと見て放置している。北朝鮮の核に脅威を感じた日本がアメリカと核をシェアする事になれば、中国は慌てふためくだろう。
 中国が北朝鮮の核を放置すると、中国への日米の核抑止力強化を招き兼ねない。
 そうならないために中国は、北朝鮮に核の撤去を働きかける必要に迫られる。そうなった場合、中国に殺生与奪の権利を握られている北朝鮮は、泣く泣く核を撤去せざるを得なくなるだろう。
 「北朝鮮は常識が通用せず、行動の予測が不可能だ。そんな北朝鮮への対処は、新たな超大国・中国に負わせるのが一番よい」、と筆者(葛西氏)は考えている。

●つまり、日米が『核シェアリング』のジェスチャーをするだけで『北朝鮮の非核化』成立、という事か。

★「正論」(3月号)『日米の核シェアリングが 東アジアの平和を守る』(JR東海名誉会長・葛西敬之氏)、より.

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