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【習主席の傲慢】

 今年5月、北京大学構内の掲示板に、中国の最高指導者である習近平・国家主席を痛烈に批判する長い論文が張り出された。
 そこには、「毛沢東が個人崇拝を推し進めたことにより、人民は無数の災禍を経験した。にも拘わらず、習近平氏は今、個人崇拝を再び大々的に推進している。歴史的悲劇が繰り返される可能性があり、警戒を強めるべきだ・・・」と書かれ、文末には『樊立勤(ハン・リッキン)』なる署名があった。この出来事は、「壁新聞事件」と呼ばれている。
 北京大学に壁新聞が登場したのは29年ぶり。壁新聞は文化大革命(1966~76年)中、毛沢東・思想を支持する紅衛兵の団体が政治的主張を周知させる手段として広く利用された。1989年6月の天安門事件に繋がる民主化運動の際にも、壁新聞は使われた。
 しかし最近では、インターネットの普及もあり、壁新聞は殆ど使われなくなっている。

 今回、壁新聞を張り出した樊立勤は、鄧小平一派に近い体制側の人間である。文革当時、北京大学に在学していた樊立勤は、紅衛兵団体のリーダーになったが、敵対する団体から暴行を受けて足に障害が残った。
 同じく文革中に紅衛兵に迫害され、足が不自由になった鄧小平の長男・鄧樸方(トウ・ボクホウ)元全国政治協商会議副主席と長年の親友で、その関係から、鄧小平時代には政府系団体幹部などを歴任し、ビジネスの世界にも進出して成功を収めた。2007年、鄧樸方との親交を詳細に綴った回顧録を出版している。
 今回、樊立勤が北京大学に張り出した壁新聞は、習主席に手厳しい一方、「鄧小平の政策は時代に適しており、国民の支持を得ている」、などと繰り返し強調し、中国を改革開放に導いた最高実力者・鄧小平を絶賛している。

 北京の改革派知識人は、今回の壁新聞事件を「独裁体制を築こうとしている習主席に対する、共産党内の既得権益層の反発の可能性がある」、と分析している。
 昨年の党大会と、今春開かれた全人代(全国人民代表大会=国会)を通じて人事の刷新が図られ、毛沢東一派、鄧小平一派、劉少奇一派は悉く党中枢から外された。このことに対し、これまで習氏を支持していた元高級幹部子弟で構成する太子党の関係者の中に、「習氏は仲間を裏切った」、との反発が起きているという。
 習主席の独裁体制が完成すれば、太子党は特権を失うと予想する人も多い。今回の壁新聞事件に鄧小平一派が関与しているかは不明だが、今後、太子党内の反発が次々と表面化する可能性がありそうだ。
敬称略.

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 中国政権内で対立する三大派閥は次のとおり。
①.共青団:「共産主義青年団」の略称で、胡錦濤・前主席や李克強・首相の出身母体。
②.江沢民派。
③.太子党:中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる人々の総称。世襲的に受け継いだ特権と人脈を基にして、中国の政財界や社交界に大きな影響力を持つ。

 しかし習主席は、出身母体である太子党を構成する、習近平一派以外のグループを排除し、太子党の弱体化を招いてしまった。そのため、党内からの反発が表面化しつつあり、今回の「壁新聞事件」もその一環と言えよう。
 憲法で「永久主席」を規定した如く、習主席の傲慢ではなかろうか。歴史的に見ると、「超独裁」は程なく失権している。主席も又・・・


★産経ニュース『【矢板明夫の中国点描】北京大に壁新聞 習氏を批判 共産党内の反発が表面化?』(2018.5.23)、より.
★上記へのリンク http://www.sankei.com/premium/news/180523/prm1805230005-n1.html

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