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【沖縄の帰属】

沖縄を盗った?
 お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔氏が、今年元日、「沖縄は元々、中国から取ったんでしょ」、と『朝まで生テレビ!』で発言し、多くの批判を浴びた。
 村本氏発言のポイントは、明治政府が琉球国を廃して沖縄県を設置した時、琉球を清国から奪ったのかどうかである。
 日本政府の公式見解として、外務省のホームページには、「当時の琉球は“両属”の体制にありました」とある。つまり、外務省の公式見解は、「当時の琉球は半分清国に属し、半分は薩摩藩に属していた」、とも受け取れる。

曖昧な政府見解.
 平成18年11月、鈴木宗男・衆院議員(当時)が国会で、「沖縄の帰属」に関する政府見解を質した。
 これに対して政府は、「沖縄については、いつから日本国の一部であるかということにつき確定的なことを述べるのは困難であるが、遅くとも明治初期の琉球藩の設置及びこれに続く沖縄県の設置の時には、日本国の一部であったことは確かである」、と回答した。
 先ほどの外務省のホームページには、「琉球は日本と清国との両方に属していた」と書かれていたが、今回の回答では、沖縄県が設置される前の沖縄は、「清国に属していたのか、日本に属していたのか、日清両属だったのかも分からない」、ということになる。
 この様に曖昧な日本政府の沖縄史観では、沖縄を日本から分断して強奪するのを狙い、「琉球の帰属は未定で解決しておらず、日本が明治時代に沖縄県を設置して強奪した」、と主張し始めた中国を利することになる。

政府見解を正す.
 この様に曖昧な政府見解に危機感を抱いた筆者(仲村覚氏)は、山田宏・参院議員に「沖縄の帰属」についての国会質問を要請した。その結果、平成29年6月、安倍晋三首相から、「沖縄については寺島(正則)外務卿が、沖縄は数百年前から我が国所属の一地方である旨述べていたことが確認されています。いずれにせよ、沖縄は長年に亘って我が国の領土であり、沖縄が我が国領土であることは、国際法上何ら疑いもないところであります」、との答弁を引き出し、それまでの曖昧な政府見解を修正することができた。

清国からの抗議.
 山田議員に国会質問を要請する際、筆者(仲村覚氏)は重要な資料を持参した。それは明治12年(1879年)の外交文書だ。
 明治12年4月に日本が沖縄県を設置すると清国は、琉球が清国に属することを主張し、廃藩置県に対する公式な抗議をしてきた。
 それに対し寺島外務卿は、「琉球は嘉吉元年(1441年)より島津氏に属し、日本は数百年に亘って琉球の統治権を行使してきたため、今回の措置が当然である」と述べ、更に、慶長16年(1611年)に薩摩の定めた琉球統治の法章15条と、尚寧王および三司官の誓文などを清国に送致した。
 それでも尚、清国は抗議してきた。そこで日本政府は、再度の抗議に対する回答書を清国に送致した。
 その回答書の要点は次の通り。「清国が琉球の主権主張の根拠とする朝貢・冊封(さくほう)は、虚文空名に属するものだ」と述べ、更に、「日本が琉球を領有する根拠は、将軍・足利義教がこれを島津忠国に与えた時より確定している」、と主張した。
 上記回答の前段は、「自らを世界の王と称し、朝貢・冊封を振り回して主権を主張するのは支那古来の慣法であり、日本の足利義満や豊臣秀吉への冊封、また魏源の著『聖武記』には、イタリアや英国も冊封とある。この様なことを以て、日本・イタリア・英国が中国皇帝に臣服するとすれば、その虚喝(カラ威張り、カラ恐喝)も甚だしく、いま清国が、沖縄に関与しようというのもこの様な虚妄に過ぎない」、と述べている。現在の日本政府の「媚中外交」とは異なり、何と論理的で痛烈な反論であろう。

帰属の決着.
 以上、沖縄県設置前の「沖縄の帰属」について確認してきた。
 明治12年の外交文書にあるように、江戸時代の沖縄は薩摩の統治が隅々にまで及び、江戸幕府の幕藩体制下にあった。
 しかし、幕府と薩摩藩の外交・貿易戦略として、琉球を明国や清国との貿易拠点として活用するため、独立国の体裁を敢えて保っていたのだ。朝貢や冊封は、外交・貿易を行うための外交儀礼に過ぎなかった。明国や清国もそれを知っていたが黙認していた、という事も明らかになっている。

沖縄県人は日本人.
 ところで、「沖縄県人は日本人か?」との命題だが、実は、沖縄の人達が「日本人の中の日本人」である、と雄弁に物語る沖縄の歴史がある。
 それは、敗戦後の沖縄県「祖国復帰」の歴史だ。サンフランシスコ講和条約で日本の放棄した領土には、朝鮮半島、台湾、奄美、沖縄、小笠原諸島がある。その中で、「祖国復帰運動」が起きたのは奄美と沖縄だけである。もし、奄美や沖縄の人たちが日本人でなかったら、日本から独立するチャンスとして、「祖国復帰運動」ではなく「独立運動」が起きた筈だ。
 NHK・BSプレミアム『英雄たちの選択 琉球スペシャル第1弾 「独立を守れ!島津侵攻 尚寧(しょうねい)王の決断」』(今月7/19放送)の中で、歴史家・上原兼善氏(沖縄県生まれ、岡山大学・名誉教授)は、「仮名文字も使用されており、基層文化(民族文化の基層を成す、伝承的な性質の強い生活文化)は日本と同一」、と述べている。つまり、文化面から見ても「沖縄=日本」、という事になる。

★iRONNA(オピニオン・サイト)『ウーマン村本に知ってほしい「沖縄モヤモヤ史観」』(日本沖縄政策研究フォーラム理事長・仲村覚氏)、(2018年7月20日、閲覧)、より.
★上記へのリンク https://ironna.jp/article/8864

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